花形ポジション、プロダクトマネージャーとは?
つい先日、Twitter上で、以下のような「ミニCEO」に関するツイートが流れてきました。
日本だと潰しが効く等の理由で就活生にはコンサルが人気だが、この地ではコンサルブームは遙か昔で今はプロダクトマネジャーが花形。「ミニCEO」等と呼ばれマーケット分析や顧客要望を製品に落とし込む。起業家や経営者を狙う者に人気で、羨望の眼差しで見られる。日本でも後追いで多分ブームが来る。
— Hiroshi Watanabe (@Hiroshi99857672) March 30, 2021
私自身、ITベンチャー企業で事業責任者を経験し、プロダクトマネージャーの経験があるので、花形と呼ばれるのに違和感を感じてました。
「何を持って花形というのか?」
プロダクトマネージャーは、何ならもっとも地味で、泥臭い仕事だと思っているので、いわゆるキラキラ・ウェイウェイみたいな仕事はむしろ逆じゃないかと。
コンサルのように潰しが効くという理由で、プロダクトマネージャーを目指すのであれば、はっきり言って絶対にやめた方がいいです。(そもそもプロダクトマネージャーって目指すものなのかみたいな議論はありますが、稼げて潰しが効く職種なら、他の職種の方が断然、コスパがいいです。)
というわけで、現役のフリーランスマーケターで、プロダクトマネージャー経験もある私が思う、ミニCEOの役割と求められるスキルに関して言語化してみました。
ミニCEO(プロダクトマネージャー)の役割は、どうにかできる人
まず、プロダクトマネージャーに求められる業務範囲は、事業に関わる全てです。
これではあまりに味気ないと思いますので、もう少し具体化すると、PLへの責任という言葉で置き換えられるのではないかと思います。
つまり、売上 – 費用 = 利益をちゃんと出せて、なおかつ中長期的な繁栄を埋める事業を作れる能力ではないかと思います。
そもそもPLを引くところから始まるので、PLを引く段階でいろいろと考えるわけです。
- どっからマネタイズするんだっけ?
- 売上の構成要素は?
- 月の広告費用ってどれぐらい積む?
- CPAってこれであってる?
- 開発チーム必要じゃね?デザイナーもいるな
- この計画だと、ミスったら秒でキャッシュアウトするな
- 利益率低くね。。。?
- どのタイミングでどの施策やろうか
こんなことをひたすらにスプレッドシートと向き合いながらコネコネしてるわけです。
考える量がものすごく多いし、初めから全部わかってることの方が少ないと思います。そもそも月の広告予算が足りなかったら、ファイナンス動く必要あるし、CPA合ってるかは、競合や業界に詳しくないといけない。開発出身じゃないのに、開発の理解も必要。
当然ですが、全部できる人なんでほとんどいないと思います。
ある意味、持てる全てを駆使して戦う総合格闘技です。極論ですが、「売上 – 費用 = 利益をちゃんと出せて、なおかつ中長期的な繁栄を埋めている」のであれば、中身に関しては、無視できます。
圧倒的な、資金調達能力によって、BSで殴るという戦略もありだろうし、自分ができない領域はその領域のプロを採用してきて事業をぶん回すというのでもありだと思います。
このあたりは、プロダクトマネージャーの色が出やすいのではないのでしょうか?王道の戦略や成功事例などはありつつも、その人の出身や経験職種、外部とのパイプラインによって、だいぶ戦略は変わるのではないかと。
総じて、特定のこのスキルがないとプロダクトマネージャーではないというようなことではなく、「事業をどうにか成り立たせることができる人」がプロダクトマネージャー、ミニCEOではないかと思います。
もっとも大事な能力は目の前の顧客を憑依させること
プロダクトマネージャーでもっとも大事な能力は何かと聞かれれば、「目の前の顧客を憑依させること」といつも答えます。
マーケティングの世界には、いろんな専門用語やフレームワークがあって、どれも有用だし、正直そういうのを駆使するのってかっこいいです。
でもそんなことより、もっと大事なことがあります。「顧客の成功体験」です。
顧客の成功体験なしには、どんなプロダクトも絶対にうまくいかないと断言できます。
どんなに優れたビジネスモデルでも、他者を圧倒する広告運用能力があろうとも、プロダクトの品質自体が低ければ、すぐさま顧客は離れていきます。
「顧客の成功体験」を導くものとして、手っ取り早いのは、自分に顧客を憑依させることがです。ありきたりですが、顧客の気持ちになって考える。この当たり前に見えることが、いろんな数字のマジックのバイアスにかかると急に見えなくなります。
だからこそ、戦略の脳部分を担うプロダクトマネージャーが顧客を誰よりも理解していることが何よりも重要です。
定量と定性のバランスをしっかり取り、チームにその熱量を伝播できるかどうか。
顧客の心を動かすものは何で、顧客の成功のために、我々のサービスは何を提供できるのか。ここを突き詰めない限り、絶対にうまくいきません。これはもはや、スキルというのか、執念や熱量、狂気に近いのではないかと思います。
夢中には何者も勝てない
努力は夢中には勝てないとはよく言ったもので、仕事の時間にしか顧客のことを考ていないようでは、論外だと思います。
顧客は、朝何時に起きて、何を食べ、どんなテレビ番組が好きで、スマホの端末は何を使っていて、家族との関係性はどんなものなのかなど、顧客のストーリーやバックグラウンドと我々のサービスの接点、使い続ける理由を考え続けなければなりません。
それも、こういった類のものは、言語化できないことの方が多く、顧客の直感や心理状態をサービスに落とし込む必要があります。そして、そうしたところにサービスとしての競合優位性があるわけです。
スキルは勝手についてくる
僕自身、初めて事業責任者を経験した際は、このスキルもないし、あれも分からない、人もいないしというような状況の中でとにかく迷走していました。はっきり言って、全く顧客目線ではなかったと思います。
しかし、今になって、顧客の成功体験にフォーカスしていれば、自ずと必要なスキルや仲間も含めて集まってくるというのが、ようやく分かりました。
顧客がどこにいて、どんなタイミングで接触していて、どういうものに心を動かされて、取り入れてくれるのだろうか。使ってみて、なぜ使わなくなったのか。逆に使い続けてくれる人の理由は?
このような平易な日本語で書かれることを徹底的に考え抜いていれば、自分が今、何を知らなくて、ブランクがどこか分かります。ブランクがわかれば、ほとんど答えがわかったようなもので、答えを知ってそうな人に聞けばいいのです。
そして、多くの人に合う中で応援してもらえる人間であるかが非常に大事だと思います。それには、事業にかける熱量と人間性が大きく関わってきます。だからこそ、自分の無知を知り、謙虚でいることが実は、もっとも成功への近道だったりします。
この記事のまとめ
プロダクトマネージャーという職種は、ある意味、非常に言語化しずらい希少な職種だと思います。プロダクトやサービスによって、求められるスキルバランスやスキルレベルは変わりますし、自身の経験値や得意分野でも大きく戦略を左右します。
抽象的だからこそ、結局、誰の成功体験を創っているのかという部分を考え続けられるかが非常に大切なのではないでしょうか。