
近年、BtoBマーケティングにおいて注目が高まっているのが「ABM(アカウントベースドマーケティング)」です。従来のように幅広い見込み顧客にアプローチするのではなく、狙うべき企業(アカウント)をあらかじめ定めて個別最適化された施策を展開する考え方が、成果を重視する企業の間で広まりつつあります。
特に、高単価商材を扱う企業や、商談獲得までの検討期間が長い企業にとって、ABMは営業・マーケティングの連携強化を推進し、より確度の高い商談創出を実現できる戦略的なアプローチです。
本記事では、ABMの基本的な定義や背景から、The Modelとの違い、実践ステップ、推進体制、継続運用のポイントまでを網羅的に解説します。「今のマーケティングが成果につながらない」「営業との連携に課題がある」といった悩みをお持ちの方は、ぜひ参考にしてください。
この記事のポイント
・ABMは、特定の企業(アカウント)を狙ってアプローチするBtoBマーケティング手法
・広くリードを集めるのではなく、狙う企業を決めてリソースを集中させるのが特徴
・営業とマーケティングが連携してアカウント単位で戦略を実行することが重要
・高単価商材や検討期間が長いBtoBビジネスで特に効果を発揮する
また、シャコウではYouTubeでの「ABM」をはじめ、BtoBマーケティングに関する役立つ情報を発信しています。ぜひ参考にご視聴ください。

ABMとは何か?基本の考え方と注目される背景
まずはABMの理解を深めるために、まずはその定義と従来型マーケティングとの違い、そして今なぜABMが注目されているのかを解説します。

ABM(アカウントベースドマーケティング)の定義
ABM(Account Based Marketing:アカウントベースドマーケティング)は、個別の企業をターゲットアカウントとして選定し、その企業のニーズ・組織構造に最適化されたマーケティング施策を個別に設計・実行するBtoB特有のマーケティング手法です。
従来のリード獲得中心の手法とは異なり、最初から「狙うべき企業」を定めてリソースを集中投下するのが最大の特徴です。1社1社に向き合うアプローチのため、営業・マーケティングの連携や事前の情報収集が非常に重要になります。
特に、以下のような条件に該当するBtoB企業で効果を発揮します。
- 高単価で関与者が多い商材を扱っている
- 検討期間が長く、短期的な刈り取りが難しい
- すでに一定のターゲットリストがある
従来のマーケティングとの違い
一般的なMA(マーケティングオートメーション)を活用したリード獲得型マーケティングは、「まずは広く見込み顧客を集め、その中から確度の高いリードを抽出し、ナーチャリングを行って商談化につなげる」というフローが基本です。
一方ABMでは、「狙うべき企業を先に決めて、そこに向けて逆算で戦略・施策を組む」ため、対象の絞り込みが早期に行われ、打ち手もパーソナライズされやすく、成果に直結しやすいという特徴があります。
| 項目 | 従来型リードマーケティング | ABM(アカウントベースド) |
|---|---|---|
| 対象 | 不特定多数の見込み顧客 | 特定企業(アカウント) |
| スタート地点 | 集客・リード獲得 | アカウントの選定 |
| ナーチャリング手法 | 一斉メール・スコアリングなど | 企業ごとの最適化された接点設計 |
| 成果指標 | リード数・CV率など | 商談化率・成約率・LTV |
ABMが注目される背景
ABMが注目される背景には、以下のような従来型マーケティングの限界と、営業・マーケ間の分断問題があります。
- リード数を増やしても、商談や受注に結びつかない
- 「見込み度が高いリードが少ない」「営業に渡しても放置される」といった声が多い
- 営業とマーケが別々のKPIで動いており、連携がうまくいかない
こうした課題を打破する手法として、「特定のアカウントに営業・マーケが一体となって取り組む」ABMの有効性が見直されているのです。
BtoBマーケティングにおけるABMとThe Modelの違い
BtoBマーケティングにおける基本戦略は、大きく分けて「The Model」と「ABM」の2つのアプローチに分類されます。これは、どのような顧客に、どのようにアプローチするかという戦略思想の違いに基づくものです。

The Modelは、広範囲の潜在顧客を対象に、リードの獲得・育成・商談化という一連のプロセスを分業で最適化するモデルです。マーケティング→インサイドセールス→フィールドセールス→カスタマーサクセスと、各プロセスを分担し、効率的かつ再現性の高い営業体制を構築するのが特徴です。特にSaaSやITサービスなど、リードボリュームが多く、商談単価が中〜小規模の企業で成果を出しやすいモデルです。

一方、ABMは特定の企業(アカウント)に対して、個別最適化されたマーケティング戦略を展開するアプローチです。ターゲット企業の課題や意思決定プロセスを精緻に把握し、部門横断でアプローチすることで、高単価かつ戦略的な商談を生み出します。つまり、「広く薄く」ではなく、「狭く深く」関係を構築していく手法です。

このように、The Modelは裾野を広げる拡大型のアプローチ、ABMは狙い撃ちで深耕する集中型のアプローチと捉えるとわかりやすいでしょう。企業のフェーズや商材特性に応じて、どちらか一方ではなく両者を使い分ける、もしくはハイブリッドで活用することが求められます。



ABMとThe Modelを使い分けるポイント
The ModelとABMのどちらが適しているかを判断する際は、「ターゲットの規模(SMB or 大手)」×「ハウスリストの有無」という2軸で整理すると見通しがよくなります。

ケース①|大手企業ターゲット × ハウスリストがない
ABM型+BDR起点で新規開拓。キーパーソンへのアプローチには、顧問・リファラルチャネル・業界ネットワークなどを活用する戦略が求められる。
ケース②|大手企業ターゲット × ハウスリストがある
ABM型が効果的。既存のリード情報・名刺情報などからキーパーソンを特定し、部門横断でABMアプローチをかけていく。大手企業の深耕営業に最適。
ケース③|SMBターゲット × ハウスリストがない
The Model型+新規リード獲得施策が有効。広告・SEO・イベントなどでリードを獲得し、MA・CRMを活用してナーチャリングしながら商談化へ。
ケース④|SMBターゲット × ハウスリストがある
The Model型が適している。メルマガ、ホワイトペーパー、ウェビナーなどのマーケ施策を駆使し、リードから商談までを分業で回していく設計が効果的。
このように、ターゲットの属性と、自社が保有する情報資産(ハウスリスト)の状況によって、最適なマーケティングモデルは異なります。ABMとThe Modelは排他的ではなく、適材適所で使い分けることが、BtoBマーケティングの成功を左右するカギとなります。

ABMを導入する4つのメリット
ABMの大きな特徴は、限られたマーケティングリソースをすべての見込み客に均等に使うのではなく、重要度の高い企業へ集中できることです。こでは、ABMが企業にもたらす代表的なメリットを解説します。

投資対効果を高めやすい
ABMでは、あらかじめ自社との相性や取引価値を踏まえて対象企業を絞り込むため、優先度の低い企業にかける工数や予算を抑えやすくなります。
特に人員や予算が限られる組織では、「どの企業にリソースを集中させるか」が明確になることで、マーケティング活動の効率を高めやすくなります。
営業とマーケティングの連携を強化しやすい
ABMでは、最初に「どの企業を狙うのか」を営業とマーケティングで共有します。共通のターゲットを持つことで、それぞれが異なる企業を追いかける状態を防ぎやすくなります。
BtoBマーケティングでは、「マーケティングが渡したリードを営業が追わない」「営業からリードの質が低いと言われる」といった摩擦が生じることもあります。その背景には、両者が異なる基準で顧客を評価しているケースがあります。
ABMでは対象企業そのものを事前に合意するため、「この企業は追う価値があるのか」という認識のずれを減らし、マーケティング施策と営業活動を同じ方向へ向けやすくなるのが特徴です。
ただし、ターゲットを決めるだけで自然に連携できるわけではありません。誰がどの情報を記録し、どのタイミングで営業へつなぐかなど、具体的な連携ルールを決めることも重要です。
既存顧客の深耕につなげやすい
ABMの対象は、新規顧客だけではありません。
既存顧客の中から追加提案の余地が大きい企業を選び、その企業の課題や取引状況に合わせてアプローチすることで、別部署への展開や別サービスの提案につなげることもできます。
すでに接点や取引実績がある企業であれば、自社内に蓄積された顧客情報も活用できるため、より具体的な提案を設計しやすい点もメリットです。
施策の効果を企業単位で検証しやすい
ABMでは、個々のリードだけでなく、対象企業との関係がどこまで進んだかという視点で施策を評価します。
たとえば、「企業内で接点を持つ人数が増えた」「別部署との接点が生まれた」「商談につながった」といった変化を企業単位で追うことで、マーケティング施策と商談のつながりを把握しやすくなります。
特に施策数を増やしにくい少人数の組織では、それぞれの施策がどの企業にどのような影響を与えたのかを整理しやすくなり、次に注力すべき施策の判断にもつなげやすくなります。
ABMが向いている企業・向かない企業の条件【チェックリスト】
ABMは、すべてのBtoB企業に同じように適しているわけではありません。
まずは次のチェックリストで、自社との相性を確認してみましょう。
- □ 取引先候補となる企業の母数がある程度限られている
- □ 1件あたりの取引額が比較的大きい
- □ 顧客の検討に複数の部署・担当者が関わる
- □ 商談から受注まで一定の検討期間がある
- □ 既存顧客に追加提案・アップセルの余地がある
- □ 営業とマーケティングが定期的に情報交換できる
- □ 顧客情報や接触履歴を確認できる環境がある
- □ 「特に取引したい企業」をある程度特定できる
該当項目が多い場合は、ABMとの相性が比較的高いと考えられます。ターゲットアカウントを絞り、試験的な運用から始めてみる価値があります。
半数程度の場合は、ABMを全面導入するのではなく、既存顧客の深耕や特定セグメントだけで試す方法が適しています。
該当項目が少ない場合は、まず幅広いリード獲得や顧客データの整備を優先した方がよい可能性があります。
なお、「中小企業だからABMに向かない」というわけではありません。重要なのは企業規模ではなく、狙うべき企業を特定できるか、1件の取引にどれだけ価値があるか、個別にアプローチする合理性があるかです。
少人数の企業でも、対象を1社〜数社に絞って試すことはできます。一方で、非常に多くの顧客へ低単価の商品を販売するビジネスでは、個社ごとの対応コストが合わない可能性があります。
シャコウはABMを導入すると決める前の段階から、事業やマーケティング体制に合う進め方を相談できます。チェックしてみても判断に迷う場合は、一度シャコウにご相談ください。
ABMの実践プロセス|導入ステップと設計のコツ
ABMの成功のカギは、アカウントの選定から施策設計、KPIの運用までをアカウント起点で一貫して設計できるかにあります。ここでは、ABM導入のためのステップを5段階に分けて解説します。

ステップ1|ターゲットアカウントの選定
ABMの出発点は「誰にアプローチするか」を明確にすることです。具体的には、自社にとって成約・LTVが高くなる可能性がある企業群(アカウント)を定義します。
代表的な選定基準
- 業種・企業規模・売上規模
- 過去の受注傾向(勝ちパターン分析)
- リードスコア・Web閲覧履歴などのファクトデータ
- インテントデータや外部リスト(例:FORCAS)
この段階で「営業が狙いたいアカウント」と「マーケが育てたいアカウント」をすり合わせることで、後工程でのズレを防ぐことができます。
ステップ2|キーパーソンの把握と情報収集
ターゲット企業が決まったら、社内で意思決定に関与するキーパーソン(複数)を特定し、その属性やニーズを深く理解します。
収集すべき情報
- 役職・部門・業務課題
- 競合導入状況
- パーソナルな関心(SNS、セミナー参加など)
営業メンバーの名刺やCRM履歴、マーケ部門のイベントログ、外部ツール(SalesNow、Eight Teamなど)を活用して、立体的な情報を蓄積する仕組みが重要です。
ステップ3|パーソナライズ施策の設計・実行
ABMでは、ターゲットアカウントの属性や業界課題に応じて、個別最適化されたアプローチが求められます。
施策例
- 業界特化型ホワイトペーパー/動画
- キーパーソン宛のパーソナルレター・DM
- 専用ランディングページや提案資料の制作
- 経営課題に紐づけた1to1ウェビナー
重要なのは「同じリソースを使うなら誰に向けて何を出すか」という視点で、全体戦略と紐づけて施策設計を行うことです。
ステップ4|営業・マーケ連携による継続アプローチ
ABMは単発施策ではなく、「関係性の構築と深化」が目的です。そのため、営業・マーケが役割を分担しつつ、共通のアカウント戦略をもとに連携を続けることが重要です。
推進のための工夫
- 定例会議でアカウントごとの進捗・温度感を共有
- タッチログや接点履歴の一元管理(CRM/SFA)
- コンテンツの使いどころを営業と事前共有(武器化)
このように、マーケが商談前を耕し、営業が商談後で仕留める連携体制が成果に直結します。
ステップ5|KPI設計と成果の可視化・改善
ABMは従来のリード数ではなく、「アカウント単位の成果」でKPIを設計する必要があります。
代表的なABM型KPI
- 対象アカウントとの接触数/接点の質
- アカウント単位の商談化率/成約率
- 1アカウントあたりのLTVや営業効率
これらの成果を可視化し、定点観測することで、施策の優先度やリソース配分の最適化につなげることが可能です。
ABMの導入は一朝一夕には進みませんが、「選定→設計→連携→評価」のサイクルを確立できれば、継続的に高い成果を生み出せるマーケティング基盤となります。


BtoBコンサルタント
柴犬先輩
ABMでプローチするには、一貫した設計が重要なんだ!
ABM推進に必要なツールと選び方
ABMでは、対象企業の情報管理、マーケティング施策の実行、営業活動の記録など、複数の業務が発生します。そのため、自社ですでに利用しているツールでどこまで対応できるかを確認し、不足する機能が出てきた段階で追加を検討するとよいでしょう。
ここでは、ABMで利用される主なツールの違いと、選定時のポイントを解説します。

MA・SFA・CRM・ABM専用ツールの違い
ABMで利用される主なツールは、MA・SFA・CRM・ABM専用ツールの4種類です。
| 種類 | 主な役割 | ABMで担う機能 | なくても始められるか |
|---|---|---|---|
| MA(マーケティング活動の自動化) | メール配信や行動データ管理 | 対象企業の反応把握、ナーチャリング | 小規模なら可能 |
| SFA(営業活動の管理) | 商談・営業活動の管理 | 営業の接触履歴、商談状況の共有 | 表計算などで代替可能 |
| CRM(顧客情報の管理) | 顧客情報の一元管理 | 企業・担当者・取引情報の管理 | 小規模なら代替可能 |
| ABM専用ツール | ABMに必要な情報を企業単位で管理 | 企業の名寄せ、対象企業分析、関係者や反応の可視化など | 必須ではない |
ここで押さえておきたいのは、ABMそのものはツールではなく、マーケティングの考え方・戦略であるという点です。
そのため、「ABMを始める=ABM専用ツールを導入する」というわけではありません。対象企業が少ない段階であれば、既存のCRMやSFA、表計算ツールなどを組み合わせて始めることもできます。
ABMツールを選ぶ際のポイント
ABM関連のツールを選ぶ際は、機能の多さだけでなく、現在の運用でどこに負荷がかかっているかを基準に判断することが重要です。
特に確認したいのは、次の3点です。
1.現在の対象企業数を既存ツールで管理できるか
対象企業が数社〜数十社程度であれば、最初は表計算ツールや既存のCRMでも管理できる場合があります。一方で、対象企業や関係者が増え、複数のシステムから情報を集めなければ状況を把握できなくなってきた場合は、専用ツールの導入を検討するタイミングです。
2.企業単位で情報をまとめる作業が負担になっていないか
ABMでは、一人ひとりのリードだけでなく、「同じ企業に所属する複数の関係者」をまとめて把握する必要があります。
担当者が毎回手作業で企業情報を整理したり、複数のツールから情報を集めたりしている場合は、企業単位で情報を管理できる仕組みを導入することで負担を軽減できる可能性があります。
3.営業が利用している仕組みと連携できるか
ABMは営業とマーケティングが同じ対象企業を追うため、マーケティング部門だけが使いやすいツールでは十分ではありません。
営業側が利用しているSFAやCRMと情報を共有できるか、営業も対象企業の状況を確認できるかを優先して選びましょう。
ABMツールの導入・運用にかかるコスト
ツールを比較する際は、月額料金や初期費用だけで判断しないことも重要です。ABMでは、ツール導入後にも次のような業務が発生します。
- 初期設定
- 顧客データの整理・登録
- 企業情報の更新
- 営業・マーケティング間の運用ルール整備
- データの確認やレポート作成
そのため、ツール自体の費用が抑えられていても、設定やデータ整備に多くの工数がかかれば、結果として運用負荷が大きくなることがあります。ツールの利用料金だけではなく、「誰が・どれだけの工数をかけて運用するのか」まで含めて判断することが重要です。
また、現在の運用を既存ツールで十分に回せるのであれば、無理にABM専用ツールを導入する必要はありません。まずは小さく始め、対象企業数や管理する情報量が増えてから必要な仕組みを追加する方法もあります。
ABMの成功に欠かせない「推進設計」とは?
ABMを単発の施策で終わらせず、「仕組み」として根づかせるために不可欠なのが、「推進設計」の視点です。これは、戦略(ターゲット・施策方針)と現場の行動(営業・マーケの打ち手)をつなぐ橋渡しの役割を担います。
単にターゲット企業を定めるだけでは、成果にはつながりません。ここでは、ABMにおける「推進設計」の重要性と、3つの観点を紹介します。
営業・マーケ・ISが共通指標で動くための体制設計
ABM対象企業に対して、「誰が、どのタイミングで、どんな情報を届けるか」を部門横断で明確にしておく必要があります。そのためには、
- アカウント単位のKPIを共通言語化(例:接触率/商談化率/LTV)
- 定例の会議体やパイプラインレビューを設ける
- 役割分担の明文化(IS:接点創出、営業:商談化、マーケ:情報提供・支援)
これにより、「どこで止まっているか」「次に誰が動くべきか」が明確になり、ボトルネックを可視化・改善しやすくなります。
中長期視点のターゲティングと体制の分離(コア/モア)
ABMを一過性の施策で終わらせないためには、短期と中長期のターゲットを分けて設計する視点が重要です。特に、短期で成果を狙うコアセグメントと、中長期で育成していくモアセグメントでは、目的も体制も大きく異なります。
| 時間軸 | セグメント | 対応体制例 | 主な目的 |
|---|---|---|---|
| 短期(1〜3年) | コアセグメント(既存顧客/高LTV層) | SDR型/The Model型 | 商談創出・売上最大化 |
| 中長期(3〜5年〜) | モアセグメント(新市場/戦略顧客) | BDR型/ABM型 | 市場開拓・関係構築 |

ここで重要なのは、コアセグメントのボリュームや特性に応じて、「SDR型(マーケ起点)」または「BDR/ABM型(営業起点)」の体制を設計する必要があるという点です。
これは単なる施策の選択ではなく、KPI設計・人材要件・組織構造にまで関わる戦略的な意思決定です。つまり、経営企画・営業企画などの企画機能には、「どの市場を、いつ、どの手段で狙うのか」を定義し、それを組織構造や現場KPIに変換する推進設計力が求められます。

また、ABMは特にモアセグメントに対する「関係性づくり・信頼構築」が目的となるケースが多く、The Model型(短期戦術)とABM型(中長期戦略)の体制分離と目的の明確化が必須です。
このように、ターゲットと時間軸を明確に区切った上で体制を組まなければ、目の前の売上と将来の市場ポジションという異なる成果指標が混在し、施策全体がブレやすくなります。
では、こうした戦略的な意思決定をどう組織に落とし込めばよいのでしょうか。
戦略と戦術──2つの視点を橋渡しする「推進設計」
ターゲットと体制の設計ができたら、次は「戦略」を「戦術」に変換し、現場で実行可能なアクションにまで落とし込む工程=推進設計が必要です。
ABMの成功には、「戦略(誰に・何を届けるか)」と「戦術(どのように届けるか)」の両視点を往復しながら組織全体を設計する力が求められます。
- 戦略視点(サービス・事業設計)
・ターゲット市場の定義
・提供価値の再設計
・事業ポートフォリオの構築 - 戦術視点(営業・マーケ施策)
・KPI・KGI設計
・部門間の役割分担と連携
・ABMやThe Modelのフレームを用いた施策展開
この2つの視点を切り離すのではなく、戦略の文脈から逆算して戦術を組み立てる設計思想が必要です。

特にABMでは、営業・マーケ・インサイドセールスの共通目標設計、会議体、KPI運用、ツール連携(SFA/MA/CRMなど)までを含めた一貫した推進設計がなければ、場当たり的な施策で終わってしまうリスクがあります。
ABMを継続運用するための体制と仕組みづくりのポイント
企業との接点や商談状況は変化するため、継続的に情報を更新し、次のアクションを判断していく必要があります。一方で、運用方法が担当者個人の判断に依存していると、業務負荷が高まりやすく、担当変更によって施策が止まる原因にもなります。
ABMを継続して運用するには、誰が担当しても一定の判断と対応ができるよう、運用ルールや情報管理の方法を仕組みとして整えることが重要です。

ABMの運用ルールを標準化する
まずは、ABMで定期的に発生する業務と、その進め方を明確にします。たとえば、次のような項目についてルールを決めておくと運用しやすくなります。
| 業務 | あらかじめ決めておくこと |
|---|---|
| 対象企業リストの更新 | 誰が、どのタイミングで優先度を見直すか |
| 接触履歴の記録 | どの情報を、どこに、誰が記録するか |
| 営業との情報共有 | 何を共有し、どの頻度で確認するか |
| アプローチの実行 | 企業の状態に応じてどの施策を行うか |
| 振り返り | 何を指標として施策や対象企業を見直すか |
ポイントは、個々の担当者がその都度進め方を考えるのではなく、繰り返し発生する業務をできるだけ定型化することです。たとえば、「毎週、対象企業の変化を確認する」「月に一度、営業と優先企業を見直す」といった基本的なサイクルを決めておくだけでも、運用が後回しになることを防ぎやすくなります。
また、ABMのためだけに毎回新しいコンテンツを制作する必要はありません。既存の記事やホワイトペーパー、セミナー資料などを再編集して活用するなど、個別化する部分と共通化できる部分を分けることも、継続運用の負担を抑えるポイントです。
必要な情報と判断基準を残す
ABMを属人化させないためには、企業情報や接触履歴だけでなく、「なぜそう判断したのか」まで記録することが重要です。
最低限、次のような情報を残しておきましょう。
①対象企業と選定理由
企業名だけではなく、「なぜこの企業をターゲットにしたのか」を記録します。たとえば、自社との適合度、想定される取引規模、現在抱えていると考えられる課題、既存の接点などです。選定理由まで残すことで、後から対象企業を見直す際にも判断の根拠を確認できます。
②意思決定者や関係者の情報
氏名や役職だけでなく、「情報収集を担当している」「現場でサービスを利用する」「最終的な決裁に関わる」など、意思決定における役割も整理します。誰にどのような情報を届けるべきかを判断しやすくなります。
③接触履歴と次のアクション
営業訪問、メールへの反応、資料ダウンロード、ウェビナー参加、問い合わせなどの接点を企業単位で記録します。さらに、「次に誰が何をするのか」まで残しておけば、単なる履歴ではなく、次のアクションにつながる情報として活用できます。
こうした情報を残す際は、入力項目だけでなく、判断基準そのものをテンプレート化する方法も有効です。
| テンプレート | 残す内容 |
|---|---|
| 対象企業カルテ | 企業情報、選定理由、想定課題、優先度 |
| 接触記録 | 接点、相手、反応、次のアクション |
| 営業への申し送り | 商談につなぐ理由、把握している課題やニーズ |
| 定期振り返り | 状況が変化した企業、停滞している企業、次の施策 |
情報と判断基準を共通化しておけば、担当者が変わった場合でも、前任者の感覚や記憶だけに頼らずABMを継続できます。
社内で担う業務と外部に任せる業務を分ける
ABMでは、企業情報の収集やデータ整備、コンテンツ制作など、継続的に一定の作業が発生します。
すべてを社内で対応しようとすると、ターゲット企業の選定や施策の改善といった本来重要な業務に時間を使えなくなることもあります。そのため、必要に応じて外部リソースを活用することも選択肢の一つです。
たとえば、次のような実務は比較的外部へ切り出しやすい領域です。
- 企業情報の収集・整理
- ターゲットリストの整備
- 顧客データの更新
- ホワイトペーパーやメールなどのコンテンツ制作
- 定型的なレポート作成
一方で、次のような事業判断に関わる部分は、社内が主体となって決めることが重要です。
- どの企業を重要顧客とするか
- 自社がどのような課題に価値を提供できるか
- 営業とマーケティングで何を優先するか
- どの指標をもって成果と判断するか
つまり、外部活用では「すべてを任せるか、すべてを内製するか」の二択で考える必要はありません。作業量の大きい実務は外部へ任せながら、顧客理解や判断基準は社内に蓄積する、といった役割分担も可能です。
外部支援を活用する場合は、「何を代行してもらえるか」だけでなく、支援終了後に何が社内へ残るのかも確認しましょう。対象企業の選定基準やデータの更新ルール、施策の判断理由、運用テンプレートなどが残る仕組みであれば、将来的な内製化や担当者への引き継ぎもしやすくなります。
シャコウでは、戦略の提案だけでなく、実際のマーケティング業務の運用まで支援します。施策を外部で実行して終わるのではなく、顧客情報や判断基準、運用方法を蓄積し、継続的に活用できる仕組みとして社内に残すことを重視しています。
【FAQ】ABMに関するよくある質問
Q1. ABMとは何ですか?
A. ABM(Account Based Marketing)は、狙う企業をあらかじめ特定し、その企業に合わせた施策を個別に設計してアプローチするBtoBマーケティング手法です。
Q2. 従来のリード型マーケティングとの違いは何ですか?
A. 従来は幅広くリードを集める方法が中心ですが、ABMは重要な企業に絞って営業・マーケが連携し、個別最適化された施策で関係構築と売上拡大を狙います。
Q3. ABMはどのような企業に向いていますか?
ABMは、1社あたりの取引額が比較的大きく、取引したい企業をある程度特定できるBtoB企業に向いています。また、商談から受注までに複数の担当者が関わる場合や、既存顧客への追加提案・アップセルの余地が大きいビジネスとも相性があります。一方、不特定多数の顧客へ低単価の商品を販売する場合は、個別対応にかかる工数が見合わない可能性があります。
Q4. ABMを始めるには、まず何から取り組めばよいですか?
最初に行うのは、ツールの導入ではなく対象企業の条件を決めることです。既存顧客の中から、自社との相性がよい企業や取引額の大きい企業の特徴を整理し、どのような企業を優先するかを営業とマーケティングで共有します。そのうえで対象企業を絞り、企業情報や接触履歴を記録しながら、小規模に運用を始めると進めやすくなります。
Q5. ABMを始めるために専用ツールは必要ですか?
必須ではありません。対象企業が少ない段階であれば、既存のCRMやSFA、表計算ツールなどを使って管理することも可能です。対象企業や関係者が増え、企業単位で情報を整理する作業に時間がかかるようになった場合に、ABM専用ツールの導入を検討するとよいでしょう。
Q6. ABMを継続的に運用するためのポイントは何ですか?
担当者個人の判断に依存しない仕組みをつくることが重要です。対象企業の選定基準、接触履歴、次のアクション、営業との情報共有方法などを共通のルールとして残しておけば、担当者が変わっても運用を継続しやすくなります。
ABM支援ならシャコウにお任せください
ABMを組織に根付かせるには、戦略設計・体制構築・施策運用・定着支援と、複数フェーズにまたがる推進力が求められます。しかし実際には、ノウハウ不足・連携の難しさ・成果の可視化の壁などにより、多くの企業が途中で頓挫してしまうのが実情です。
そこで重要になるのが、ABMに精通した外部パートナーの活用です。シャコウでは、戦略構想から社内定着まで一気通貫で支援するABM支援サービスを提供しています。
シャコウのABM支援でできること
- 戦略設計:ターゲットアカウントの定義/ABM体制設計/KPI設計/The Modelとの棲み分け
- 施策運用:パーソナライズドコンテンツ企画/接点創出施策(広告・イベント・DMなど)/営業連携支援
- 定着支援:会議体・レポート設計/組織浸透のための社内合意形成/ツール活用サポート
特に「戦略はあるが、推進設計が甘くて成果につながっていない」「営業とマーケが噛み合わず、アカウント対応が属人化している」といった企業に対し、絵に描いた戦略を実行される戦略へと転換する設計力に強みを持っています。
- ABMの導入を検討しているが、どこから手をつけていいか分からない
- 部門間の連携が難しく、社内に定着しない
- The Modelからの移行・併用を考えている
- 既存施策を見直したい
このようなお悩みをお持ちの方は、ぜひシャコウの無料相談をご活用ください。貴社の状況を丁寧にヒアリングし、最適な支援方法をご提案いたします。




新卒BtoBマーケター
白ポメちゃん
狙い撃ちするのがABMですね!!
じゃあ、The Modelとはどう違うの〜??