現代のBtoBマーケティングにおいて、効率的かつ効果的な営業活動を実現するためには、適切なフレームワークと戦略が欠かせません。その中でも「The Model」は、営業・マーケティング活動を顧客中心に再構築し、部門間の連携を強化することで成果を最大化するフレームワークとして注目されています。

本記事では、The Modelの基本的な仕組みや各部門の役割、さらにはBtoBマーケティングのもう一つの重要戦略「ABM」との違いについて解説します。

 

また、シャコウではYouTubeでの「The Model」の解説も行っています。他にもBtoBマーケティングに関する情報を定期的に発信していますので、ぜひ参考にご視聴ください。

▼ゼロから始めるBtoBマーケティング第1項
「The Model(ザ・モデル)とは?BtoBマーケ・セールスはなぜ失敗する?」編

 

The Modelとは?

The Model(ザ・モデル)とは、営業・マーケティング活動を顧客中心に設計し、効率的かつ効果的に成果を上げるためのフレームワークです。このモデルは、特にBtoBビジネスにおいて、従来の部門間の壁を取り払い、マーケティングからセールス、カスタマーサクセスまでのプロセスを一体化することで、顧客満足度と収益性を最大化することを目的としています。

The Modelが注目される背景

The Modelが注目される背景には、顧客ニーズの多様化や、購入意思決定プロセスの複雑化があります。ある調査では「顧客と初めて商談を行うまでに購買プロセスの57%は完了している」というデータが出ています。以前は営業担当が顧客に直接的なアプローチを行い、その中で購買の検討がされ、購入に至るのが一般的でした。

しかし、デジタルの普及により、今や誰もが容易く情報にアクセスできるようになったため、商談の前に顧客は自身で情報収集を行うようになっています。その結果、営業担当と商談する前に、ある程度の意思決定がなされているという状況です。

そのため、情報収集中の顧客に対してどのように接点を持ち、アプローチしていくのかが重要になっています。

The Modelの営業プロセス

The Modelの営業プロセスは、以下の4つのステージで構成されています。

  1. マーケティング
  2. インサイドセールス
  3. フィールドセールス
  4. カスタマーサクセス

各部門が専門性を発揮しながら効率的に顧客対応を行います。この分業体制により、従来の「一気通貫型」の営業スタイルでは難しかった精度の高いプロセス管理と効率化を可能にします。

特に、各部門の目標を「母数」「成功率」「ゴール」という数値で管理し、次の段階の「母数」として連携させる仕組みが特徴です。この仕組みにより、営業プロセスのどの段階で停滞が起きているかを容易に特定でき、効果的な改善策を講じることができます。

このモデルは特に、契約後も顧客との関係性が重要なSaaSやサブスクリプション型などのビジネスに適しており、契約獲得からその後のカスタマーサクセスまでを通じて、顧客満足度と売上の向上を目指す仕組みです。

The Modelの各項目の役割

The Modelの各項目には、顧客との接点を最大化し、効率的かつ効果的に顧客体験を向上させるための明確な役割が割り当てられています。各項目が専門性を発揮することで、営業活動全体が円滑に進み、最終的な成果を最大化します。

マーケティング

マーケティングは、主に見込み顧客(リード)の創出を担います。ターゲットに応じた広告やコンテンツ配信を通じて、潜在顧客の興味を引き付け、自社製品やサービスへの関心を高めることを目指します。この段階で質の高いリードを獲得することが、後続のプロセスを効率化するカギです。

インサイドセールス

インサイドセールスは、マーケティングで獲得したリードを育成する役割を担います。顧客とのコミュニケーションを重ねることでニーズを明確化し、購買意欲の高いリードを選別してフィールドセールスに引き渡します。この段階で顧客との関係性を深めることが、成約率の向上につながります。

フィールドセールス

フィールドセールスは、インサイドセールスから引き渡されたリードを商談化し、具体的な提案や契約締結を行う役割です。対面やオンラインでの商談を通じて、顧客に最適なソリューションを提供し、信頼関係を築きます。商談の質が高いほど、契約後の顧客満足度向上にも寄与します。

カスタマーサクセス

カスタマーサクセスは、契約後の顧客を支援し、製品やサービスの効果的な利用を促進する役割です。顧客が期待した成果を得られるようにサポートすることで、顧客ロイヤルティを高め、解約率を低下させます。この段階での活動は、リピートやアップセルの機会創出にもつながります。

The Modelがもたらすメリット

The Modelは、顧客体験を中心に据えた現代の営業・マーケティング戦略において、不可欠なフレームワークです。ここでは、The Modelがもたらす具体的なメリットについて解説します。

各専門分野に専念でき営業効率が高まる

The Modelでは、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスといった各段階が明確に分業されています。この仕組みにより、各部門が自らの専門分野に専念することができ、成果を最大化する環境が整います。一人の営業担当者が全てを担う場合に比べ、それぞれの役割に特化したプロフェッショナルが対応するため、効率的かつ精度の高い営業活動が可能です。

営業プロセスの可視化により問題把握がしやすい

The Modelでは、営業活動全体を「母数」「成功率」「ゴール」といった指標で数値化し、各プロセスの進捗状況をデータで管理します。この可視化により、営業フローのどの段階で課題が発生しているのかを迅速に特定することが可能です。例えば、リードの育成が停滞しているのか、成約率に問題があるのかを明確にし、的確な改善策を講じることができます。

営業担当に依存せず再現性の高い組織体制が作れる

従来の営業体制では、成果がトップ営業マンに依存するケースが多く見られます。しかし、The Modelでは、営業活動のプロセスを標準化し、組織全体で再現性のある成果を生み出せる体制を構築します。これにより、個々の能力に頼らず、チーム全体で安定した成果を上げることが可能です。新人や若手社員の活躍の場も広げることにもつながり、長期的な成長を支える基盤を形成できます。

The Modelのデメリット

The Modelは営業・マーケティング活動を効率化する強力なフレームワークですが、いくつかの課題が生じる可能性があります。ここでは、その代表的なデメリットについて解説します。

共通認識がないとマーケ・セールス間で対立構造が生まれる

The Modelは分業を前提としたフレームワークのため、各部門が自分たちの目標達成に集中しすぎると、全体最適が損なわれることがあります。特に、マーケティング部門とセールス部門の間で成果や責任の押し付け合いが発生するケースが発生します。例えば、「質の低いリードが渡された」「セールスがリードを適切にフォローしない」といった指摘が対立構造を生む原因です。

これを防ぐには、各部門が共通のKPIや目標に基づいて協力し合う仕組みが必要です。また、定期的なミーティングや情報共有を行い、全体のゴールに向かって部門間で連携を深めることが重要です。

引き継ぎがうまくいかなければ顧客満足度が下がる

The Modelでは、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスといったプロセスが段階的に進むため、顧客情報の引き継ぎが頻繁に発生します。この引き継ぎがスムーズに行われないと、顧客との関係性が薄れるだけでなく、対応の一貫性が欠けることで満足度が低下するリスクがあります。

例えば、前のプロセスで把握していた顧客の課題や要望が次のプロセスで共有されていないと、顧客から「何度も同じ説明をしなければならない」と不満が生じるでしょう。このような状況を防ぐには、CRMやデータ管理ツールを活用し、顧客情報を一元化する仕組みを整えることが重要です。

BtoBマーケティングは大きくThe ModelとABMに分けられる

BtoBマーケティングは、その戦略の中心となるアプローチに応じて、大きく「The Model」と「ABM」の2つに区分されます。これらは、企業が顧客に対してどのようにアプローチするかという基本的な方針の違いによって使い分けられます。

The Modelは、広範囲にリードを獲得し、顧客を段階的に育成していくプロセスを重視します。特に、多くのリードを対象に顧客化を目指すSaaS企業やITサービス業界などで効果的とされ、組織全体での成果を最大化するために最適化されています。

一方、ABM(Account-Based Marketing)は、特定の企業(アカウント)をターゲットとし、その企業に特化したマーケティング戦略を展開する手法です。ABMは、従来の大規模なリードジェネレーションとは異なり、高い成約率を期待できるターゲット企業に対してピンポイントでアプローチします。顧客ごとにカスタマイズされたメッセージや提案を行うため、契約単価の高い取引や戦略的な顧客との関係構築に適しています。

The Modelは広範囲の顧客基盤の拡大を目指すのに適しており、ABMは戦略的なアカウントに焦点を絞り、高い価値を提供するのに効果的です。これら2つのアプローチはそれぞれ得意とする領域が異なるため、企業の目標や対象市場に応じて使い分けることが重要です。

The Modelなどのアプローチ方法を考える際のポイント

BtoBマーケティングにおいてアプローチ方法を考える際には、ハウスリストの有無とターゲットの4象限で考えると良いでしょう。

中小 (SMB) ← ターゲット → 大手(エンプラ)
なし ← ハウスリスト → あり

例えばハウスリストがある場合は、深耕営業が最優先となります。

中でもターゲットが大手の場合は、他部署の名刺情報やリード情報からターゲットをあぶり出し、ABMのアプローチでターゲットと接触していくのが効果的です。

一方ターゲットがSMBの場合、既存リード情報を活かしたマーケティング展開が有効です。ハウスリストに向けてメルマガ・ホワイトペーパー・ウェビナーなど無料施策を優先的に行うことで、効率的に成果を上げられます。

ハウリストがない場合は、新規リード・商談獲得を生み出し続ける再現性をどう作るかが鍵となります。

ターゲットが大手の場合は、ABMが適しており、BDR(新規開拓型のインサイドセールス手法)アプローチや顧問等リファラルチャネルを駆使し接点を創出していく方法が向いています。

ターゲットがSMBの場合は、The Model型が適しています。ハウスリストを蓄積していくとを優先し、リード獲得効率が良い施策をにマーケティングやールス展開を進めていくと良いでしょう。

 

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