近年、AIやデジタルツールの普及により、企業の業務プロセス管理が大きく変化しています。その中でも特に注目されているのが「BPaaS」です。
BPaaSはクラウド上で特定の業務におけるプロセスを提供するサービスで、業務効率化やコスト削減につながるツールとして注目を集めています。人事や販売、マーケティング業務などに適用でき、専門人材やノウハウが不足している企業にとっては有効な選択肢と言えるでしょう。
本記事では、BPaaSの概要をはじめ利用するメリット、活用が向いている企業の特徴などを解説します。ベンダーの選び方も解説していますので、ぜひ参考にしてください。
また、シャコウではBPaaSの適用業務の1つであるBtoBマーケティングに関する情報をYouTubeで発信しています。初心者の方でもBtoBマーケティングを網羅的に理解できる内容になっていますので、ぜひ参考にご視聴ください。
▼ゼロから始めるBtoBマーケティング第1項
「The Model(ザ・モデル)とは?BtoBマーケ・セールスはなぜ失敗する?」編
BPaaSとは?BPOやSaaSとの違いも解説
BPaaSとは
BPaaS(ビーパス/ビーパース)とは「Business Process as a Service 」の略で、クラウド技術を活用して企業の特定の業務プロセスを提供するクラウドサービスを指します。日本語では「業務プロセスアウトソーシングサービス」と訳されます。
業務プロセスのアウトソーシングを意味する「BPO」と、「SaaS(Software as a Service)」を掛け合わせたようなサービスで、BPOとデジタルの双方の強みを兼ね備え、さらなる業務効率化につながるサービスとして注目されています。
従来、企業は業務プロセスを自社で設計して、運用するのが一般的でした。しかし、DXの加速とともに、業務のさらなる効率化や外注が求められるようになり、BPaaSが注目されるようになりました。BPaaSはクラウド上で提供されるため、企業はコストを抑えて必要な業務プロセスに対して柔軟に利用することができます。
BPO・SaaSとの違い
BPOは「Business Process Outsourcing」の略で、業務の一部を外部へ委託することを指します。
SaaSは「Software as a Service」の略で、ベンダーがクラウド上で提供しているソフトウェアを、ネットワークを介して利用できるサービスです。
一方、BPaaSはクラウドベースでの業務プロセス全体を提供するサービスを指し、両者を組み合わせたサービスだとイメージするとわかりやすいでしょう。
近年、多種多様なSaaSが登場し、導入する企業が増加しています。しかし、SaaSを効果的に活用するためのスキルやノウハウが不足しており、十分な効果を引き出せないという課題を抱える企業も少なくありません。
BPaaSは、こうした「SaaSを使いこなせない」という課題を解決するとともに、SaaSを包括する上位概念として位置付けられるサービスです。
BPaaSを利用する企業は約35%
クラウド型人事労務システム「ジンジャー」を提供しているjinjer株式会社が行った調査では、BPaaSを知っている人は約20%という結果が出ています。その中でのBPaaSの利用率は約35%という結果になりました。
日本ではまだ知名度が低い結果となっていますが、全世界での市場規模を見ると、2023年が約640億米ドルであるのに対し、2036年までには市場の収益が約1,000億米ドルに拡大するという予測が立てられています。
このようにBPaaSは急速に市場が拡大しており、今後はBPOに代わる新たなサービスとして、さらに普及していくことが期待されています。
参照1:jinjer株式会社|BPaaSの認知度・利用実態調査
参照2:SDKI Analytics|サービスとしてのビジネスプロセス(BPaaS)市場
BPaaS利用のメリット
BPaaSの活用によって、企業は業務効率化だけでなくさまざまなメリットを享受できます。ここでは代表的なBPaaS利用のメリットを紹介します。
業務効率化
BPaaSの活用によって、標準化された業務プロセスを導入でき、手作業で行なっていた業務や、無駄な作業を大幅に削減できます。
また、多くのBPaaSにはAIやRPAと統合されているため、データ入力や請求書処理などの定型業務の自動化が可能です。
これにより、従業員はよりコア業務に集中できるようになり、企業全体の生産性向上が実現します。さらに、クラウド上でのリアルタイムなデータ共有によって、業務の進捗管理や意思決定の迅速化も期待できます。
コスト削減
BPaaSを利用すれば、自社でシステムを構築したり運用したりする必要がないので、初期費用やメンテナンス費用の削減につながります。
多くのサービスが従量課金制や月額課金制といった柔軟な料金体制を採用しており、必要な業務プロセスを必要な分だけ利用できるため、コストの最適化が可能です。
さらに、業務プロセスの効率化により、これまで無駄にかかっていた人件費やオフィススペースの削減といった効果も期待できます。
特に、中小企業やスタートアップにとっては、スモールスタートでの導入が可能な点は大きな魅力でしょう。
社内へのスキルやノウハウの蓄積
BPaaSの導入によって、企業は業務プロセスの改善やデジタルツールの利用方法を学び、社内にノウハウを蓄積することができます。これにより、業務の標準化が進み、企業全体の生産性向上につながります。
また、BPaaSは最新のテクノロジーに対応しているため、社員がこれらの技術に慣れることで、企業全体のデジタル力強化も期待できます。こういったスキルやノウハウの蓄積は、これからの時代において競争を勝ち抜くために欠かせない要素となるでしょう。
BPaaSを活用できる主な業務
BPaaSはさまざまな業務プロセスに適用できます。以下が活用できる代表的な業務とその活用例です。
業務 | 内容 |
---|---|
人事管理 | ・給与計算や勤怠管理の効率化 ・求人掲載から応募者追跡までといった採用プロセスの管理 ・社員データベースの統合や分析 |
財務・会計 | ・請求書作成や支払い処理の効率化 ・経費精算プロセスの自動化 ・税務申告や法定レポートの生成 |
販売管理 | ・受注管理や在庫管理の効率化 ・顧客への請求書発行や支払い状況確認 ・販売データのリアルタイム分析 |
マーケティング | ・顧客セグメンテーションやターゲティングの最適化 ・キャンペーンの自動実行と効果測定 ・SNSやメールマーケティングの効率化 |
カスタマーサポート | ・チャットボットやAIを活用した24時間サポート ・問い合わせ内容の適切な部署への振り分け ・顧客満足度調査や分析の自動化 |
IT運用 | ・システム監視や障害対応プロセスの自動化 ・セキュリティアップデートやパッチ管理 ・IT資産の管理と利用状況の可視化 |
BPaaSの導入が向いている企業の特徴4選
BPaaSの効果を発揮しやすい企業にはいくつか特徴があります。ここではBPaaSの導入が向いている企業の特徴を4つ紹介します。
人材不足に悩んでいる企業
昨今、少子高齢化や労働人口の減少により、多くの企業が人材不足という課題に直面しています。BPaaSの導入によって、業務プロセスを自動化したり、クラウドサービスを活用して作業を効率化できるため、限られた人員でより多くの業務を遂行することが可能です。
また、単に人数が足りないというだけでなく、特定のスキルやノウハウを持った専門人材の不足に悩む企業にもおすすめです。BPaaSの利用を通じて、標準化されたプロセスや最新のツールの使い方を学ぶことで、社内にノウハウを蓄積することができ、長期的には社内全体のスキルアップにつながります。
業務プロセスを改善したい企業
BPaaSは、無駄な作業や属人的な作業が多いという課題を持つ企業にとっては、効果的な解決策です。標準化された業務プロセスを活用し、必要に応じてカスタマイズしていくことで、業務効率化と生産性向上につながります。
また、BPaaSの特徴はITやAIといったデジタルツールを活用できることであり、これらを組み合わせることで、業務プロセスのさらなる改善が期待できます。
季節変動やプロジェクトベースの業務量が多い企業
BPaaSは、季節によって繁忙期や閑散期がある企業や、プロジェクトの進行状況に応じて業務量に変動がある企業に適しています。例えば繁忙期にはサービスを拡張して利用し、閑散期には利用を抑えるといった調整が簡単にできるため、必要なタイミングに必要なリソースだけ確保するといったことが可能です。コストを抑えながら、業務量にスムーズに対応できるのはBPaaSの大きな魅力だと言えます。
DX推進に取り組みたい企業
DXは今や企業が時代に取り残されず、競争力を保つために必要な取り組みだと言えます。BPaaSはAIやRPAなどの最新技術を活用するサービスのため、社内のDX推進に大いに役立ちます。
BPaaSの活用によって業務プロセスをデジタル化し、データの可視化やリアルタイムの分析を通じた迅速な意思決定が可能になります。これにより、企業は競争力を維持するためのベースを整えることができます。
BPaaS導入において考えるべきリスク
BPaaSはさまざまなメリットがある反面、少なからずリスクも存在します。ここではBPaaS導入を考える際に、知っておくべきリスクを紹介します。
セキュリティ面のリスク
BPaaSを利用したい業務によっては、企業が所有する重要なデータを渡すケースもあります。特に、個人情報や機密情報を扱う業務の場合は、第三者の手に情報が渡る危険性や漏洩のリスクを考えなければなりません。
また、セキュリティ対策はBPaaSを提供するベンダーに依存するため、万が一ベンダーのセキュリティ対策が万全でなければ、サイバー攻撃による業務停止やスタッフのミスによる情報漏洩が発生するケースもゼロではありません。
ベンダーロックインのリスク
ベンダーロックインとは、特定のベンダーに依存し、他の企業への乗り換えが困難な状況を指します。特にBPaaSは、特定のベンダーの業務プロセスやシステムに依存するケースが多く見られます。そのため、導入後に思った成果が出ない場合も、解約や乗り換えに多大なコストがかかったり、何らかの障壁が発生する場合があります。
BPaaS導入を成功させるためのベンダー選びのポイント
BPaaSの導入を成功させるためには、自社に適したベンダーを選びが重要です。ここではベンダーを選定する際に確認すべきポイントを紹介します。
対応できる業務範囲と業務量
まずはベンダーが対応できる業務の範囲が、自社のニーズに適しているか確認しましょう。特に業務プロセスが複雑な場合は、ベンダーの対応力が不足してトラブルにつながるケースも考えられます。
また、繁忙期やプロジェクトごとに業務量の変動がある場合も柔軟な対応ができるかどうかもチェックしておく必要があります。標準化された業務プロセスだけでなく、必要に応じてカスタマイズが可能かどうかもチェックしておくと安心です。
セキュリティ対策
BPaaSは企業の機密情報や個人情報を扱うケースがあるため、厳重なセキュリティ対策が求められます。各ベンダーのセキュリティ対策を確認する際には、以下のような基準を確認すると良いでしょう。
- ISO27001認証
- SOC2認証
- ISMS認証 など
また、バックアップ体制の有無や、情報漏洩をはじめトラブルが発生した際の保障があるかどうかも重要なポイントです。
実績と導入事例
ベンダーを選ぶ際には、今までの実績や導入事例の確認も欠かしてはなりません。実績や導入事例は各社のHPに掲載しているケースがほとんどなので、必ず確認するようにしましょう。
確認するポイントとしては、実績の数や、自社と同業種での実績の有無などが挙げられます。特に同業種での成功事例は、自社の課題やニーズを理解してくれるかを示す重要な要素なので、必ず確認するようにしましょう。
BtoBマーケティング・セールスにおける変遷とBPaaS
BtoBマーケティング・セールスのトレンドは以下のように進化しています。
労働集約的な営業を主体としたBtoB 1.0(BPO時代)
↓
データ活用や施策効率化を推進するSaaSが乱立するBtoB 2.0(SaaS時代)
↓
「最善の施策」を「最適な方法」で実行するために、オペレーションごと切り出すBtoB 3.0(BPaaS時代)
近年のテクノロジーの進化により、BtoBマーケティング・セールス業界でも数多くのSaaSやデータツールが登場しています。しかし一方で、デジタル人材の不足が課題となり、より効率的なマーケティング・セールス活動の必要性が高まっています。
特に日本の中小企業では、高度化するBtoBマーケティングやセールスにおいて以下のような課題が顕著です。
- 「最善の施策」を選ぶことが難しい
- 「最適な方法」でSaaSやデータを活用できない
- それを実現するための人材が不足している
このような状況を打開するためには、効率的かつ戦略的なアプローチが求められています。
目指すべきBPaaSの姿
このような時代背景を踏まえ、高度化するBtoBマーケティング・セールスの施策選定から実務遂行までのオペレーションを一式で切り出し、クライアント企業が顧客と向き合い、サービスやプロダクトの改善といった本質的な業務に集中できる体制の構築こそが目指すべきBPaaSの姿です。
シャコウでは、SaaSやデータプラットフォームを持たない立場だからこそ、SaaS・データ企業との連携・共創こそがBtoB 3.0時代に求められるBPaaSのあり方だと考えています。
シャコウがSaaSやデータの最適な活用方法、メソッド、実務遂行を担うことで、クライアント様は「最善の施策」を「最適な方法」で実施された成果を享受できます。これにより、クライアント様、SaaS企業、そして当社が「三方よし」の関係を築ける体制を目指しています。
シャコウはBtoBマーケティング・セールスを一気通貫でサポート
BtoB領域特化型でマーケティングからセールスまでを一気通貫で支援するBPaaS Growth Companyであるシャコウでは、BtoBマーケティングからセールスの全領域において、上流から下流まで幅広い支援が可能です。
BtoB企業支援に特化し、これまでにBtoBマーケティング・セールスの「定石」と言えるメソッドを蓄積してきたシャコウだからこそ可能な再現性の高い支援を提供し、クライアント企業のパートナーとして、本質的な伴走支援を行います。
BtoBマーケティング・セールスの全体設計や各領域に関する課題をお持ちの方は、戦略・実行・クリエイティブ・セールスの四位一体の強みを持つシャコウにぜひご相談ください。